2003年:スペインで開催されたヨーロッパ消化器病学会にてBest Abstract Award, EURO1000受賞 (欧州消化器病学会)
「スペインにかかる虹」
ヨーロッパ消化器病学会から旅費つきで招待され、スペインを訪れました。学会発表を終え、中世の姿をそのまま残すトレドの町並みを一人で歩きました。古城からの帰り、急にスコールが降り、広大なオリーブ畑に雨が降りそそぎました。まもなく上がった雨のあと、雲の切れめからぱあっと柔らかな日がさして、荒涼とした大地に美しい虹がかかりました。私は、まだ見たことのない空や、新しいものを求めて生きてきたけれども、このスペインの虹のかかった美しい空と、江田クリニックのある故郷の空とはつながっており、私が生きるべき道は、私を形作ってくれたなつかしい故郷に帰り、地域医療に尽くす初心を果たすことなのだと強く感得しました。「青春の夢に忠実であれ」とはシラーの言葉ですが、地域に根ざし、今まで学んできた知識や経験を目の前の患者さんの診療に生かす努力をし、同時に新しい医学の進歩を還元する努力もして行きたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
中世の姿をそのまま残すスペインの街
トレド
アルカサール (白雪姫のモデルとなった古城)
世界の研究者との交流
同じ真理を求めて、交流する者達
ハーバード大学研究員 毎年米国でお会いします。
世界中の医師が、未知の答えを求めて議論しあいます。初めて参加した時、広い世界というものを感じた気がしました。「どうしたら病気を克服できるか」という共通の医学的真理を求めて、出身国の壁もなく、「ここはどう思うか」、「どうしたら疑問を解明できるか」、などと英語で議論し合う、その美しさ、潔さに、深く多くのことを感じました。その議論の中では、海外の研究員より私のほうが早くその真実を発見し論文にしていることを相手が知り、げんなりする場面や、その逆もあります。自分が頭をひねって書いた英文論文が、世界の人に読まれ、研究に影響を与え、また次の研究の足がかりになっているのを見るのは、とても充実感を感じるものです。非常に刺激的なことが多かった経験でした。世界というもの、学問の真理を追究するその美しさを感じました。
世界初の報告
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世界初、私が米国で報告したバレット食道におけるCDX2の免疫染色写真(逆流性食道炎が長くつづくとバレット食道になります)
私は、「逆流性食道炎が長い期間治療されずに続くと、バレット上皮という上皮が出現してきて、これが食道の腺がんの発生母地になる。このバレット上皮の出現にはCDX2遺伝子が大きく関与する」ということを米国消化器病学会で発表しました。
この私の発表をもとに、フランスの医師、Marta Marchetti らが、「Chronic acid exposure leads to activation of the cdx2 intestinal homeobox gene in a long-term culture of mouse esophageal keratinocytes 」という論文を書いて、細胞レベルで確認してくれました。
このような世界レベルでの交流というものは、実にエキサイティングなものです。
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あとがき
大学医学部の使命は、明日の医学を切り開く、新しい真実を解明することにあります。
しかしともすると、こういった新しい知識は、一部の専門家のみが知るにとどまり、一般の患者様にはわかりにくく、浸透しないままとなっているのではないでしょうか。新しい医学知識が解明されているのに、それが患者様のもとに届くのが遅れれば、当然その恩恵を得るのも遅れます。私は、これではいけないと思ってペンをとりました。私は、未来の患者様を救うのも大切ですが、今この時代を生きる患者様に、治って欲しいと思いますし、できれば病気にならないで欲しいと願います。ピロリ菌の話、どういう胃の人は気をつけないといけないのか、塩分を控えた食事、消化器を専門にし、修練を積んだ医師におそれないで診てもらうこと、などなど。皆が健康で明るい故郷になることを祈り、ペンを置きます。
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自治医科大学より医学博士号を授与される(指導教官 菅野健太郎 消化器内科教授)
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